インタビューなど

強化のフロントライン⑪ カブ男子の評価、渡部民人選手との出会い

2018.10.05

<強化のフロントライン>


kiwameru01-prof.jpg〜宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策〜

日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。今回は、全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部を視察した宮﨑強化本部長が、カブ男子の部に対する評価を話してくれた。
 


●才能豊かな選手がそろうカブ男子
 その才能を刺激し、伸ばすことが強化本部の役割

 
非凡なプレーを見せたカブ男子優勝の渡部民人(偉関TTL)
 
渡部民人と並び、逸材と期待される岩井田駿斗(誠卓球CL.)
 


 前回は、全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部を視察した上でのバンビの評価と、バンビ世代の強化策についてお話ししました。今回は、カブ男子の部(小学4年生以下)の評価を述べましょう。

 カブの部も、前回述べたバンビの部同様、プレーの質がかなり向上していました。男子で上位に進出した選手は、チキータや両ハンドドライブ、カウンタードライブなどを当たり前のように身に付けていました。パワーが足りないだけで、彼らのプレーはシニアの選手と比べても遜色のない内容だったと思います。
 特に、カブ男子で優勝した渡部民人選手(偉関TTL)は目を見張るような素晴らしいプレーを見せてくれました。その渡部選手と私との間には、ちょっとした縁があります。強化の話からはそれますが、余談としてお話ししましょう。

 私は普段、東京都北区にある味の素ナショナルトレーニングセンターにおります。今から3年前のある日、所用で味の素ナショナルトレーニングセンター近くにある偉関卓球ランド(偉関TTL)を訪ねた時のことです。卓球場に入ると、一人の少年がおばあちゃんと思われる方とボールを打ち合っていました。そして、おばあちゃんと楽しそうにラリーをする少年のボールタッチや腕の振り方、身のこなしに、私は目を奪われました。
 私はこれまで、日本代表選手として、また指導者として、世界中の選手を見てきました。その経験が、「この子はモノが違う」と私に告げました。卓球人としての血が騒ぎ、たまらずおばあちゃんに断り、私が直接その少年の相手をしました。少年はその日で卓球をするのが3回目だということでしたが、そうとはとても思えない見事なタッチやフォームで私が送るボールを打ち返してきます。左右に少し動かしてみても同様で、「この子は必ず強くなる」と確信しました。
 その少年は学校の上履きで卓球していたため、おばあちゃんに「けがをするからできることなら卓球シューズを買って履かせてほしい」とお願いし、偉関卓球ランドを主催する偉関さんには、「この子は強くなるから最低週3回は来させた方がいい」と助言をして卓球場を後にしました。
 その少年が、当時小学1年生だった渡部選手でした。

 今回の渡部民人選手のカブ男子優勝を目の当たりにし、彼と出会った当時のことが思い出されて感慨深いものがありました。と同時に、あれほどの才能ならば、ここまで来るのは必然だと納得しました。
 しかし、当然ながら才能だけではこれから先の激しい競争を勝ち抜いていくことはできません。才能に加え、卓球や生活に対するしっかりした考え方や本人の努力がなければ、さらに上を目指すことはかなわないでしょう。
 このことは渡部民人選手に限ったことではありません。カブ男子には、岩井田駿斗選手(誠卓球CL.)や2位に入った日野湊介選手(柏ソレイユ)など才能あるホープがそろっています。彼らに、卓球はもちろんのこと、生活面や精神面においてもさまざまな刺激を与え、良い方向へ導くサポートをすることが、強化本部の重要な仕事の一つです。
 そして、ひょんなことから関わりがあった渡部民人選手には、我々の強化によって日本を代表する選手に成長してもらい、私の目が狂っていなかったことを証明してほしいですね。

(取材=猪瀬健治)