大会報道

2010モスクワ大会最終日:5月30日

2010.05.30

<世界卓球選手権大会>

女子団体、シンガポールが悲願の初優勝 〜中国の9連覇阻む〜

シンガポールが世界の頂点に

 女子団体決勝は、史上初の9連覇を目指す中国と、2008年広州大会準優勝で北京オリンピック銀メダルのシンガポールが対戦した。
 前回とオリンピックは張怡寧と王楠という二枚看板がそろっていたが、今大会は若手中心で臨んだ中国。大黒柱不在という中国女子唯一の不安材料が決勝の舞台で現実のものとなった。
 

●1番 丁寧vs馮天薇
 中国は昨日の日本戦で福原に逆転勝ちした丁寧がトップ。一方のシンガポールはエースの馮天薇が登場した。
 試合前、会場のあちこちに散らばる中国の応援団の声援がサラウンドのように巻き起こる。その応援をバックに丁寧が先手を取ってフォアハンドドライブを決めて6-2、9-5と引き離して、丁寧が先行する。すると第2ゲームは丁寧が馮天薇のミドルへの送球をボディーワークでうまく処理して6-0、9-3として、早くも先取点に王手をかけた。
 勢い付いた中国サポーターが五星紅旗を振りながら加油!(チャーヨ)のかけ声を送る。第3ゲームは丁寧が馮天薇のフォアハンドをうまくしのいで4-2として、シンガポールベンチがタイムアウトを入れる。丁寧を世に送り出した周樹森監督から秘策を伝えられたのか、馮天薇はここから丁寧のバックサイドにボールを集めて7-7とすると、そのままバック攻めを徹底してなんとか1ゲームを奪い返した。第4ゲームは立ち上がりから丁寧が厳しい台上プレーで馮天薇のミスを誘って8-3と仕留めにかかる。ここで気持ちが気持ちが緩んだのか?丁寧に雑なミスが出て8-5となったところで中国ベンチがタイムを入れる。しかし、勢いを取り戻した馮天薇が再びバック攻めで8-8に追いつくと、9-9からフォアハンドで攻めて、試合をゲームオールに持ち込んだ。
 最終ゲーム、嫌な流れで追いつかれた丁寧が気迫の粘りで5-2でチェンジエンド。しかし、馮天薇も負けじとドライブで粘り返して5-4とする。ここで馮天薇が長い間合いを取ってコートを外し、丁寧のリズムを崩して5-5に追いつく。ここから意地の攻防が繰り広げられて、8-8、9-9とゆずらない。緊迫のこの場面で馮天薇がまたもやバック攻めでマッチポイントを握ると、最後は丁寧が3球目ドライブをミスして、馮天薇が0−2からの大逆転勝利。シンガポールは前回に続いて中国から先取点を挙げた。


丁寧は2−0としたが・・・

馮天薇がバック攻めで逆転

リード守れず先制許す


●2番 劉詩文vs王越古
 今大会初の失点を喫した中国はエース劉詩文が登場。一方のシンガポールは前回の決勝で3番手だった王越古を2番的に起用した。
 ビハインドスタートという予想外の展開に、劉詩文の表情が硬い。立ち上がりからドライブの距離感がずれて0-4。1-6でまさかのサービスミス。王越古は落ち着いて劉詩文のドライブを受け止めて7-11で先行する。第2ゲームに入っても劉詩文の緊張はほぐれず、ラリーでミスが出て1-4。王越古は焦って単調な攻めになる劉詩文の両ハンドドライブを表ソフトのバックハンドで揺さぶって4-8とリードを保って、いきなり0−2と王手をかけた。
 ハッと気がつくと追い詰められていた劉詩文。第3ゲームは目が覚めたのか出足から猛攻を仕掛けて6-1として、気合いのガッツポーズ。このまま9-2と押し切って、ようやく1ゲームを奪った。会場の応援団から加油!の声がこだまする。
 第4ゲームは王越古のブロックが冴えて劉詩文のミスを誘って2-5となり、中国がたまらずタイムアウト。ここから劉詩文がクロスに展開して5-5に追いつくと、シンガポールがタイムでリズムを戻そうとする。一気に抜き去りたい劉詩文だが、7-6、8-7、9-8、10-9と常にリードしながら2本差を付けられず、ジュースにもつれ込んだ。すると王越古が劉詩文の連続ドライブを止めてからフォアクロスにカウンターを放って10-11とマッチポイントを握ると、フォアに厳しく送られたボールに飛び込むファインプレーを見せて、大金星を挙げた。
 シンガポールが中国から2点を先行する誰も考えられなかった展開となった。


劉詩文は硬さが抜けず・・・

王越古がブロックではね返した

施之皓監督のゲキも・・・


●3番 郭炎vsスン・ベイベイ
 次世代の中国を背負う若手二人が相次いで敗れて王手をかけられた状況の中国。この緊急事態に登場するのはベテランの郭炎だ。一方のシンガポールは若手のスン・ベイベイを起用した。
 あとがない戦いを強いられることになった郭炎、立ち上がりは気負いが出て攻撃にミスが重なり、3-5、5-8と先行される。スン・ベイベイは無理をせず前陣でのライジングで応戦して、6-11で第1ゲームを先行した。
 この流れだと前半の二人と同じ展開にはまると察知した郭炎は、バックハンドの応酬でじっくりボールを見極めて伸ばして4-1。このまま上から押し込んで、なんとかタイに戻した。すると第3ゲームは立ち上がりからエンジン全開。ポイントを取るたびにチョォ!のかけ声で自らを鼓舞して9-4と引き離して、2−1と逆転に成功。こうなると完全に主導権が郭炎に移って、第4ゲームも打ち合いで勝って4-2でシンガポールがタイム。しかし、慌てるスン・ベイベイが無理にフォアハンドで攻めてミスを連発して6-2と点差が広がる。このまま郭炎がガッチリとバックハンドで押し切って、3−1で勝利をもぎ取った。
 中国はベテランの奮闘でなんとか星を1つ返して、4番のエース対決に持ち込んだ。


郭炎が気迫のプレー

スン・ベイベイは防戦に


●4番 劉詩文vs馮天薇
 中国が流れを戻して回ってきた4番は、世界ランキング1位の劉詩文と世界ランキング2位の馮天薇という最高峰の戦い。
 試合前、中国応援団が国歌を合唱。一方、ヨーロッパ系のファンからシンガポールに対しての声援が飛ぶ。試合はバッククロスの打ち合いが展開されて4-4、5-5、6-6。ここでリスクを背負って攻める劉詩文にミスが出て6-9とされると、馮天薇が攻撃をうまくしのいで第1ゲームを先行する。しかし、第2ゲームは劉詩文が前がかりでライジングバックハンドで攻めて4-1とリード。ここで馮天薇が動いて丁寧なループドライブをかけると、弱気が見える劉詩文が止めきれず4-4となり中国ベンチが早くもタイムを要求した。ここで気持ちを入れ直した劉詩文がテンポよく攻めて9-7とする。しかし馮天薇は黙々と回転をかけたドライブを打ち続けてジュースに追いついた。ここを失いたくない劉詩文はゲームポイントをしのいで14-14とすると、15-14で3球目ドライブをミドルに放ってなんとか1−1のタイに戻した。
 追いつかれた馮天薇だが、慌てず丁寧にドライブをかけ続けて0-5とリード。劉詩文は追い上げようするが、3-6でサービスミスを犯して首をかしげる。このまま馮天薇がリードを保って5-10するが、劉詩文にしのがれて7-10でタイムアウトで一息入れた。ここで馮天薇がレシーブフリックからバックハンドのライジングでフォアに押し込んで、シンガポールが栄冠に王手をかけた。
 いよいよ土俵際に追い詰められた劉詩文。懸命に声を出してラリーの主導権を握ると6-4、8-6、9-7とリードを保つ。馮天薇が粘って9-9になるが、劉詩文がサービスで決めてゲームポイントを握ると、ラッキーなネットインでなんとかこのゲームをもぎ取った。
 エース対決はいよいよ最終ゲームとなり、会場の熱気が最高潮に達する。立ち上がりから馮天薇が快調に攻めて3-5でチェンジエンド。ここから動きが一段と冴えて4-8と引き離してソォッ!と声が出る。追い込まれた中国は、応援団から加油!の声援が注がれ、何も聞こえない。そんなプレッシャーにも負けず、馮天薇がキッチリ止めて4-9とすると、劉詩文が間合いを取ってリズムを変えようとする。ここから2本奪い返して6-9とするが、馮天薇がバックの応酬で上回ってついにチャンピオンシップポイントを手にした。最後は7-10で馮天薇のドライブを劉詩文が止めきれず、ゲームセットが告げられた。その瞬間、1993年から同じ時を刻んで来た歴史の流れが止まり、そこに新たな1ページを書き加えた。
 シンガポールは最強中国が目指した史上初の9連覇を阻止。そして世界の卓球史にその名を刻む感動の初優勝を飾った。


劉詩文が懸命の強打も・・・

馮天薇が気迫で打ち返す

苦境にベンチも重苦しく・・・

プレッシャーに押しつぶされ・・・

馮天薇が気持ちを爆発させた

そしてついに新たな歴史を作った


 ■女子団体 決勝■

中 国
 
1-3
 
シンガポール

丁寧
11-8,11-3,8-11,9-11,9-11
馮天薇
劉詩文
7-11,8-11,11-2,10-12
王越古
郭炎
6-11,11-6,11-4,11-6
スン・ベイベイ
劉詩文
7-11,16-14,7-11,11-9,7-11
馮天薇




男子団体、中国が5連覇達成 〜ドイツを3−1で下す〜

中国男子が5連覇達成

 今大会を締めくくる最終試合。直前の女子団体の大熱戦の余韻が残る中、両チームがコートに向かう。
 中国が勝てば自国初で史上最多タイの5連覇に肩を並べる。一方のドイツは悲願の初優勝を目指す。

●1番 馬龍vsボル
 中国は馬龍をエース起用ではなく2番手起用に変えて、トップに持ってきた。一方のドイツはボルで勝負に挑む。
 試合は激しい打撃戦の様相。フォアハンドでドカンと攻める馬龍と両ハンドでスパンと決めるボルが互角のラリーで8-8。ここで馬龍が回り込んでストレートに打ち込むと、ボルが台上で慌ててミスが出て、馬龍が第1ゲームを先取する。続く第2ゲームも馬龍が攻勢をかけて6-1としてボルがうつむく。勢いに乗る馬龍が厳しい攻めを展開して9-3と引き離す。しかし、ゲームを捨てないボルが必死のループで9-7に追いつくと、中国ベンチが早くもタイムアウト。これで気合いを入れた馬龍が9-8から3球目攻撃をミドルに決めて、2−0と追い込んだ。
 ドイツはボルの2点取りが勝利への絶対条件。それは重々承知のボル、第3ゲームは馬龍のバックにドライブを集めて2-7とする。しかし、馬龍が動いて盛り返して6-8でドイツがタイムを入れる。ここから競り合ってジュースにもつれ込むが、馬龍に打ちミスが出てボルが何とか1ゲームを奪い取った。すると第4ゲームはボルが先手を取ってからバックハンドで鋭角に攻めて5-9として、苦境からゲームオールに追いついた。
 女子同様に緊迫の展開となり、会場から加油!とティーモ!の声援が入り交じる。互角の打ち合いは4-5でチェンジエンド。ボルがリードを保って6-7、7-8。ここで4球目ドライブを決めて7-9と引き離すと、両クロスに広角に攻めて7-10とマッチポイントを握った。大声援の中、ボルが馬龍のドライブを止めてから打ち込んで、見事な逆転劇を披露した。
 中国は世界ランキング1位の馬龍で失点するまさかの展開となった。


馬龍がドライブでリーチも・・・

ボルが広角に攻め返した

見事な逆転劇で先制


2番 馬琳vsオフチャロフ
 中国は先行される展開で、エース起用の馬琳が登場。ドイツは若手のオフチャロフの勢いに託す。
 試合は経験値で圧倒的に勝る馬琳が主導権を握る。立ち上がりから多彩な台上プレーからの連続ドライブで主導権を握って8-4としてチョライ!と叫ぶ。オフチャロフはフォアへのブロックからの攻めで応戦するが、10-9から馬琳がフィッシュで粘って第1ゲームを先行。観客席の応援団に拳を握ってアピールする馬琳。第2ゲームは馬琳がフォアハンドのストレート攻撃で9-6として、2−0と王手をかけた。今日、初めて安心して見られる試合に、ホッと一休みする応援団。
 第3ゲームはオフチャロフが1-3とリードするが、馬琳がスパートをかけて4-3とひっくり返して、ドイツがタイムアウトを要求。しかし、馬琳のプレーを止めることができず10-5。最後は3球目を決めて、馬琳がオフチャロフを圧倒。
 馬琳がベンチの期待にしっかり応えて、星を1−1に戻した。


馬琳のプレーが冴え渡る

オフチャロフは持ち味出せず

応援団もようやく一安心


3番 張継科vsズュース
 スウェースリングカップへの流れを決める大事な3番。中国は若手成長株の張継科を投入。ドイツは中軸のズュースで勝負をかける。
 立ち上がりはズュースのペース。張継科の素早い攻撃を受け止めてフォアサイドに回して主導権を握って0-5。ズュースは要所でうまくカウンターを決めて7-11で先行する。第2ゲームもズュースがバックサイドからえぐる攻撃で1-4とリードすると、中盤まで点差を保って6-9とする。ここで張継科がようやく目覚めて鋭いバックドライブを決めて9-9に追いつくと、強気の握り拳で気持ちを盛り上げて攻め切って、1−1のタイに戻した。
 第3ゲームは張継科が流れをつかんで7-4、10-7とリード。ここで3球目で雑にフォアをミスすると、レシーブミスが出て10-9となり、中国がタイム。ここで張継科がフォアクロスの打ち合いを制して吠えると、中国応援団から手拍子が巻き起こる。
 こうなると張継科が勢いに乗る。一気に速攻を決めて3-0とするとドイツがタイムアウト。しかし、上からのカウンターでズュース寄せ付けず7-2として勝負を決めた。
 中国は4番のエース対決を1点リードで迎える貴重な得点を挙げた。


張継科が中盤から猛攻

ズュースは立ち上がり快調も・・・

中国ベンチも気迫の声援

4番 馬琳vsボル
 いよいよ5連覇が見えてきた中国は馬琳が登場。ドイツはエースのボルで追いつきたい展開。両者は2006年ブレーメン大会でも対戦しており、そのときはボルが勝っている。
 とにかく先行しないとボルを楽にさせてしまう馬琳が動き回って3-0。気合い十分のチョライ!が出て10-5とリードする。ここからボルが捨て身のカウンターでポイントを重ねてジュースに追いつくと、馬琳の攻めにミスが出てボルが逆転で先取する。嫌な取られ方をした馬琳。第2ゲームはいきなりエンジン全開で8-1として、1−1に追いついた。
 第3ゲーム、加油!の声援を力に変えられる馬琳がフォアハンドで猛然と攻めて5-0。しかし、ボルが攻め返して5-3となり、中国ベンチがタイムアウト。ここから激しい打ち合いとなるが、7-7から打ち合いを馬琳が制して気迫のチョライ!ここから馬琳が攻め続けて、ついに栄冠に王手をかけた。
 山場の第4ゲームは先手の取り合いとなり4-4。ここで馬琳がスパートして6-4と離して、たまらずドイツベンチがタイムアウトを入れる。ボルも懸命に応戦して8-7と追いすがるが、再び馬琳のエンジンに火が付いて動き回ってポイントを重ねる。最後は馬琳がドカンとドライブで決めて、馬琳がボルを振り切った。その結果、中国がドイツを3−1で下して見事に5連覇を達成した。
 国内選考会ではボロボロの姿を見せて、最後に王励勤との代表決定戦を乗り越えてモスクワにたどり着いた馬琳。しかし、若手中心の中国男子チームにあって、頼りになる存在感が際立った。


馬琳が動き回って攻め立てた

ボルは必死に盛り返したが・・・

最後に選ばれた馬琳がヒーロー

 ■男子団体 決勝■

中 国
 
3-1
 
ドイツ

馬龍
11-9,11-8,10-12,5-11,7-11
ボル
馬琳
11-9,11-7,11-5
オフチャロフ
張継科
7-11,11-9,11-9,11-7
ズュース
馬琳
14-16,11-4,11-8,11-7
ボル




今大会の模様は、卓球レポート7月号に掲載

ついに歴史の節目が訪れた

 2003年パリ大会でのシュラガーの優勝以来、7年ぶりに五星紅旗以外の国旗が中央に掲げられた。
 次回2011年ロッテルダム大会は個人戦。果たしてどんなストーリーが待ち構えているのだろう。

 今大会の模様は 7月号(6/20発売予定)に掲載予定。