大会報道

2018年世界ジュニア 渡邉ジュニア女子監督「戦術転換の能力が必要」

2018.12.06

<世界ジュニア選手権大会>

世界ジュニア選手権オーストラリア大会4日目は、男女団体の決勝が行われた。王座奪還を目指して中国に挑んだ日本だが、日本は木原が1点を奪うにとどまり1対3で敗北。日本には何が足りなかったのか。渡邉隆司ジュニア女子監督に決勝を振り返ってもらった。
 

戦術転換の能力は中国と日本ではまだ差があると渡邊監督


 木原を3番で起用したのは、中国の3番手である黄凡真と相馬がジュニアサーキット・チェコオープンで対戦して、団体戦で1対3、シングルスで3対4で敗れていました。木原はまだ対戦したことがありませんでした。黄凡真の準々決勝・準決勝での戦いぶりを見ていて、準々決勝でアメリカのエイミー・ワンに負けて、準決勝も不安がのぞく戦いぶりだったので、心に余裕を与えたくないと考えて(勝ったことのある相馬ではなく)木原を選択しました。相馬も2月のチェコジュニアよりずっと成長しているし、相馬が出てもある程度良い勝負はできたと思いますが、決勝での相手のメンタルなどを考慮したうえでの選択です。
 
 大藤については、今大会ではずっと2点起用していこうと思っていました。国際大会でも活躍しているし、自力で選考会で代表権を獲得した唯一の選手なので、長﨑とのツインエース扱いで、中国の主力選手とも勝負させようと考えていました。
 これはぼくのオーダーのミスなのですが、大藤を銭天一と前半で当てるつもりでいました。昨日もぼくが(サウスポーの)サービスをずっと出していて、お腹にラケットをぶつけたあとがついてしまうくらい出しまくってたんですけど、中国がオーダーを変えてきました。準々決勝、準決勝と銭天一がエースのオーダーだったので、大藤を2番手扱いすれば、前半で銭と当たる。長﨑が前回勝っている石洵瑶に当たる。1・2番で相性の良さそうな選手を対戦させて、先手必勝でリードを奪い、少しでも中国にプレッシャーを与えたいと考えていましたた。事前合宿の時点で、大藤に前半で銭天一と当てると話していましたから。これは中国はそれほどオーダーを変えてこないという予想があったからです。でも、やられました。中国もそれなりにオーダーを考えてきていたんでしょうね。アジアジュニアでも銭天一が優勝しているし、準々決勝、準決勝のオーダーを見てもエース扱いで来ると思っていました。中国としては、長﨑と(昨年の決勝で負けている)石洵瑶を前半で当てるのを嫌がっていた部分もあると思います。
 
 1番の長﨑対銭天一は、過去に対戦経験はあって負けています。終盤でラケットの角当てがありましたね。自分が2点取らなければという気持ちでやっていたと思うので、精神面のコントロールがうまくいかなかった部分はあると思います。
 
 2番の大藤対石洵瑶は、相手の石洵瑶が相当気合いが入ってましたし、プレーも良かった。8月のアジアジュニアで見た石洵瑶とはイメージが違って、少し強くなっていると感じました。アジアジュニアでは相馬だけしか対戦していなくて、団体戦で2対3、個人戦で1対4で負けていますけど、対攻撃の試合を見ていないので石洵瑶が強くなっているという実感はありませんでしたが、今大会を見て、去年より強くなっているし、状態の良さも感じました。
 大藤は1ゲーム目、サービスが効いている時に浮いたチャンスボールをミスしたのが痛かったですね。1ゲーム目を取っていれば、相手へのプレッシャーも試合の展開も変わってくるので、その打ちミスがすべてだったと思います。中国選手と対戦するとプレッシャーがあるので、浮いたボールをしっかり決めるのは難しい。でも決めなければいけないボールでした。またレシーブでは、石洵瑶のサービスが全然わかっていなくて、ちょっと苦しい展開になりました。
 
 3番木原対黄凡真は、相手が慣れるまではこちらが有利に展開できると思っていたまし。木原はこの1年でフットワークや、攻撃的なプレーを身につけてきて、それを柔軟に出せたことが良かったと思います。戦術の転換もスムーズでした。あとし、ゃがみ込みサービスは普段はそれほど多用しないんですけど、それを使う準備をしていたのも有利に働いた一因だと思います。良いところでフォアにロングサービスを出したり、うまい使い方をしていましたね。
 
 4番長﨑対石洵瑶は苦しい展開でしたね。長崎はビックリもしていたんじゃないですか。かなり厳しいコースに打ったボールでも、さらに厳しいコースに返されたりして、去年勝ったイメージのままで試合に入ってしまった。石洵瑶に対して得点を狙えるポイントがなかったし、コース取りも単調になっていた。あれだけ威力のあるボールを持っているので、コース取りの多彩さはもっとほしいですね。
 
 団体戦が終わっただけなのに総括的な話になってしまいますが、結局試合で勝つためには自分のやりたいことをやったり、相手の待ちを外したり、相手の嫌がることをやったりと作戦を1本1本変えていく能力が求められます。しかし、日本では作戦を変えていく練習というのが、全体の練習の中に組み込まれていない。たとえば、最初の2本は下回転系サービスからツッツキ打ち、次の2本は相手のストップに対してチキータ、次の2本は巻き込みサービスとか、2本交替でも3本交替でもいいから、自分の作戦を変えていく練習です。自分の作戦が変われば、相手の対応も変わってくるし、そこでの柔軟性も高める必要がある。そういう練習をもっとしていかないといけない。
 
 ジュニアサーキットやワールドツアーがそういう場になるのかもしれないですけど、ワールドツアーなどはどうしてもプレッシャーが大きすぎて、今まで使っていない戦術を試すような余裕がない。既存の戦術だけで戦ってしまうイメージがあります。男子は試合でもいきなり戦術を試したりできますが、女子は練習の中でも、戦術を変えていく練習が必要だと感じました。
 
 先日、女子JNTが優勝した全日本団体の前に、JNTの合宿をしていたんですけど、その時に戦術を切り替える練習を取り入れてみました。10分とか8分の時間の中で、自分が試合で使いそうな戦術を3パターン準備して、2本交替で使っていく。その方法が良いかはわからないですが、あまりやっているところを見ないので、練習方法を確立させていけば試合でも戦術の切り替えがスムーズにできるように感じます。
 
 ゲーム間やタイムアウト後の中国選手の戦術転換の徹底ぶりは、誰の目にも明らかじゃないですか。木原にしても、タイムアウト後に明らかにフォアを狙われたり、長﨑が石洵瑶戦の3ゲーム目8-9でタイムアウトを取られて、次の1本でいきなり石洵瑶がロートスのサービスを出してきた。ベンチのアドバイスを受けての戦術の転向ですよね。そういう点では日本選手より上を行っている。(中国女子監督の)閻森がタイムアウト後にサービスをハイトスからロートスに変えることが結構多いんですよ。だから映像をいろいろ準備して、選手にも見せたりしていた。急にロートスに変えられると、チキータをしようとしていた選手はタイミングが合わなくてとっさに手が出てしまいますよね。長﨑は逆チキータで返しましたけど。技術を身につけるにしても、戦術があってこその技術だし、そういう技術練習はもっとやらないといけないと感じています。
 
 戦術転換の能力は、中国と日本ではまだまだ差があります。技術の基礎力も、中国の方が断然あると思いますが、日本の方がプレーは個性的で、伊藤、平野、早田もそうですし、長﨑、大藤、木原もプレーは違いますよね。そういうプレースタイルの違いで勝てたり、競ったりできる部分はあります。基礎力では差があっても、競ることはできている。さらに、あと1本という場面では、戦術の変換を柔軟にできる能力が必要になってくると思います。



 

卓レポ.comでは随時、ツイッターとこちらの大会報道で情報をアップしていきますのでお楽しみに!

卓レポツイッター:https://twitter.com/takurepo

日本卓球協会:http://www.jtta.or.jp
国際卓球連盟(ITTF):http://www.ittf.com